バンカーバスターはなぜ地下深くを攻撃できるのか? その仕組みを解説

強固な地下要塞や司令部などを破壊するために開発された「バンカーバスター」。その驚異的な貫通力の秘密は、「重量」「形状」「強度」そして「信管」 という4つの要素を巧みに組み合わせた設計にあります。

目次

1. 圧倒的な「重量」が生む運動エネルギー

バンカーバスターが地中深くへ潜るための最も基本的な力は、その圧倒的な重量から生み出される運動エネルギーです。例えば、米軍が保有する大型貫通爆弾「GBU-57」の重量は約13.6トンにも達します。高高度を飛行する爆撃機から投下されたこの巨大な質量が、重力によって加速され、着弾時に凄まじいエネルギーとなって地表に叩きつけられます。このエネルギーが、分厚いコンクリートや岩盤を突き破る原動力となるのです。

2. 貫通力に特化した「細長く鋭い形状」

バンカーバスターは、空気抵抗を減らし、エネルギーを一点に集中させるために、細長く鋭い形状をしています。これは、杭を打つ際に先端を尖らせるのと同じ原理です。断面積が小さいほど貫通時の抵抗が少なくなり、同じエネルギーでもより深く突き進むことができます。

3. 着弾の衝撃に耐える「強固な弾体」

地中やコンクリートに高速で突入する際、爆弾本体には想像を絶する衝撃がかかります。そのため、バンカーバスターの弾体(ケーシング)は、ニッケルクロム鋼などの非常に硬い特殊合金で分厚く作られています。この強靭な殻が、内部の爆薬や信管を衝撃から守り、目標の深度に到達するまで弾体の形状を維持する役割を果たします。

4. 最も重要な「遅延信管」という頭脳

そして、バンカーバスターがその真価を発揮するための最も重要な技術が 「遅延信管」 です。

通常の爆弾は、目標に着弾した瞬間に爆発します。しかし、それでは地表を破壊するだけで、地下の施設にダメージを与えることはできません。

一方、バンカーバスターに搭載された遅延信管は、着弾の衝撃を感知してから、あらかじめ設定された時間、もしくは一定の層を貫通したことを感知した後に起爆します。この「遅延」のおかげで、爆弾は地中深くまで貫通した後に爆発し、地下施設の内部から破壊的なダメージを与えることができるのです。

この信管も、着弾時の凄まじい衝撃や減速Gに耐えうるように、極めて高度な技術で設計されています。


このように、バンカーバスターは、重力と自身の質量を利用した単純な物理原理を、最先端の材料科学と精密な信管技術によって極限まで高めた兵器と言えます。精密誘導システム(GPSやレーザー誘導)によってピンポイントで目標に到達し、その圧倒的な貫通力と計算され尽くした起爆タイミングによって、地下深くに隠された目標を破壊するのです。

自力推進しないのか?

B-2ステルス爆撃機から投下されるような代表的なバンカーバスター(例: GBU-57)は、ミサイルのように自力で推進していくわけではありません。

基本は「重力」を利用した自由落下爆弾

これらのバンカーバスターは、正確には「地中貫通誘導爆弾」と呼ばれます。その推進力の源は、ロケットモーターのような自前のエンジンではなく、高高度から投下されることによって得られる位置エネルギーです。

  1. 高高度からの投下: B-2のような爆撃機が成層圏に近い高高度(例えば12,000m以上)からバンカーバスターを投下します。
  2. 重力による加速: 投下された爆弾は、地球の重力に引かれて落下しながら、どんどん加速していきます。空気抵抗を最小限にする細長い形状も、この加速を助けます。
  3. 凄まじい運動エネルギー: 地面に到達する頃には、その巨大な重量(GBU-57で約13.6トン)と速度が相まって、凄まじい運動エネルギーの塊となります。このエネルギーを使って、分厚いコンクリートや岩盤を突き破るのです。

つまり、ミサイルのように「推力」で進むのではなく、「重さ」とそこから生まれる「落下速度」で目標を貫く、巨大な「杭」や「槍」のようなものとイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。GPSやレーザーによる誘導装置は、この「槍」が正確に目標へ着弾するための舵取りの役割を担っています。

【例外】ロケット推進のバンカーバスターも存在する

ただし、すべての地中貫通兵器が自由落下型というわけではありません。ご指摘のように、ロケットモーターを搭載したタイプも存在します。

  • 弾道ミサイル/巡航ミサイル型: ミサイルの弾頭部分をバンカーバスターにしたものです。この場合、ミサイル本体のロケットエンジンやジェットエンジンで目標まで高速で飛行し、着弾します。韓国軍が開発している「玄武4」弾道ミサイルなどがこれにあたります。これらは、航空機が敵の防空網に近づけないような状況でも、遠距離から地下施設を攻撃できる利点があります。
  • 終末速度加速型: 第二次世界大戦中にイギリスで開発された「ディズニー・ボム」のように、自由落下した後、着弾直前にロケットモーターを噴射してさらに加速し、貫通力を高めるという特殊なタイプもかつては存在しました。

まとめると、B-2から投下される映像などで見られる大型のバンカーバスターは、基本的に自力推進はせず、重力を利用して落下する誘導爆弾です。一方で、ミサイルに搭載される形でのロケット推進式のバンカーバスターも存在しており、兵器の種類によって仕組みが異なります。

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この記事を書いた人

金重総合研究所の主席研究員。
子供の頃から研究者を目指し、ライフワークとして日々様々な研究をしています。
経営・マネジメント・金融・DXあたりが本職です。
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