お金は借りられるだけ借りておけ

『中小企業経営学』の記念すべき1限目です。タイトルを衝撃的に書いてしまいましたが、こんな基本的なことなのに、学校ではどこも教えてくれないですね。経理マンの入り口たる簿記の専門学校でも、大学の経営学部でも教えてくれません。経理は教わる場がありますが、財務を教わる場というのはなかなか無いですね。

日本人は長いこと『お金を借りるのは悪いこと、汚らわしいこと』のような洗脳を受けているように感じます。ですが、実際は違います。

借りたものを返さないのが悪いだけで、借りることは悪くありません。

もっと正確に言うと、『返せるのに返さない』のが悪いだけで、返せないのであれば、返さないことは悪くありません。返せなくなる人に貸した人が悪いんです。

そう言うと、倫理観を疑うかもしれませんが、倫理観の問題ではありません。

これは法律の問題なんです。

法律について勉強した人であれば、『貸した人』と『借りた人』のどちらを保護するように法律が整備されているか、ご存知だと思います。貸した人は保護されません。借りた人を保護するように法律は整備されています。

犯罪教唆するほど私達は愚かではないです。きちんと遵法精神があります。

返さなくて良いという話題はそれだけでかなり長くなってしまいますし、私たちの印象を悪くする話題なので、必要な方には個別にお伝えさせていただくとして、なぜ借りられるだけ借りたほうが良いのかと言う本題に戻りましょう。

『必要なときに必要なだけ借りる方がいいんじゃないか?』とお考えですか?

そんな悠長な考え方をしていたら、会社は潰れます。

私の親戚で『ゴルフの会員権が6000万円で安かった』と言ってのける2代目社長がおられました(故人です)。そのお母様(初代社長の奥様に当たります)とお話する機会があったので、率直に聞いてみました。

『おばあちゃん、会社やってて一番大変だったのはどんな時?』

返ってきた答えも率直でした。

『そりゃぁ、カネ繰りだよぉ~』

既に経営者としてキャリアを積み始めていた私にとっては、当時はまぁそうだよな、という程度の感想でした。この時はこれが最期の言葉になるとは思いもしませんでした。それから月日が流れ、『そりゃぁ、カネ繰りだよぉ~』がすごく身に沁みる経験をしました。命をかけて一番大事なことを教わった気がします。

その感謝の意味を込めて、1限目の題材として選びました。

ちなみに関係ないですが、先の2代目社長からは『もっと遊べ』という言葉が最期の言葉です。伝え聞くところによると、『ここから復活したら、あいつは立派な社長になるぞ』とも言っていたそうです。病床からの最期の時の言葉ですので、重みがありますね。(精進します。)

さて、横道にそれてしまったので、本題に戻しましょう。

そもそもお金が必要な時はどんなときでしょうか?業績が良いときですか?それとも業績が悪い時でしょうか?

業績が良いときに必要な運転資金は確かにあります。黒字なのに倒産することもあるくらいです。

ですが、本当に必要な時は会社が苦しいときです。

苦しいときに銀行は貸してくれるでしょうか?

銀行は慈善事業ではないです。彼らほど営利を追求している企業は無いんじゃないかというほどに、利益を求めています。

経験されるとわかると思いますが、銀行は業績が悪くなると、途端に手のひらを返します。それはそれは、人間不信になるくらいに。

ドラマの中では人情的に描写されることも多いですが、そんなのは口先だけで、実際のところ融資の判断は銀行内のコンピューターが数字を計算して判断しています。そこに感情が入る余地なんてありません。(と、銀行のシステムを作ってきた私が断言します)

なので、1つ目の大事なポイントは

業績の良いときに借りて、業績の悪いときのために備えよ

ということです。もちろんただで借りられるわけではないので、金利がかかります。金利は保険料だと考えて下さい。必要以上の保険料を払う必要はないですし、無理して借りる必要もないですが、借りるタイミングはよく考えたほうが良いです。

銀行がお金を貸すときに数字を計算するわけですが、その中でも皆さんがわからないながらにふわっとした感覚で言うものに『信用』という言葉があります。

信用力があれば借りられる

確かに合っています。ではその信用力とはどのように測るのでしょうか?担当者の感情に依存するのでしょうか?それはドラマだけの話です。先程もお伝えしたように、銀行内では審査するためのシステムがあるわけで、コンピューターが機械的に計算します。信用も同じことです。

信用の評価方法は企業秘密なので、銀行の担当者レベルでは知ることもできないです。

ですが、この『信用』の評価値を上げる方法がわかっていたら、皆さんはどうしますか?もちろん、上げるべきですよね。信用保証協会のレート(保証料率)についてはまた別の機会にお話しようと思いますが、銀行での『信用』を上げるためのやるべきことは『お金を返すこと』です。約束を守って初めて信用が生まれます。なので、初めての融資では信用なんて無いに等しいのです。借りなければ返せません。まずは貸してくれるだけ(=審査に通る額だけ)でいいので、借りましょう。そして返済をしましょう。それが

信用を作る

ということです。

では、創業間もない信用もない時はどうしたら良いのか?

次回は実践編として『お金の借り方』について書こうと思います。

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この記事を書いた人

金重総合研究所の主席研究員。
子供の頃から研究者を目指し、ライフワークとして日々様々な研究をしています。
経営・マネジメント・金融・DXあたりが本職です。
私を採用したい人、私と一緒に働きたい人、一緒に知識を肥やしていきたい人はぜひお声がけ下さい。

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